第6節 蘇州市
蘇州市は無錫市から40Km東南にあり、隋代の運河で繋がっています。
紀元前514年に呉王が都とした所で2500年以上の歴史を持っています。宋代には「魚米之里」といわれて栄え、刺繍と錦織が発達しました。元代にはマルコポーロが訪れ東洋のベニスと讃えられています。明代には100万人都市として世界でも有名な大都市です。
2006年2月27日と2009年9月2日~4日蘇州市の門墩を観察しました。
09年はガイド兼通訳の張柏樹氏と二人で地区を分担して観察し蘇州旧城の約85%を調査しました。明清時代の蘇州城は東西3.4km南北4.7kmです。
獅子型:2組 丸型:45組 箱子型:15組 石鼓型:1組 板子型:1組=合計64組の門墩を確認しました。(旧城外も含む。)
獅子型
画像1:天鑒楼(撮影:張柏樹氏) (画像をクリックして 大きくなりますヨ)
民国時代に建設
画像2:天鑒楼の獅子正面(撮影:張柏樹氏)
画像3:天鑒楼の獅子内側(撮影:張柏樹氏)
300年前の獅子型門墩を移設
画像4:“懐古閣”の店内の獅子型門墩 山塘街209号
“山塘街”は唐代白居易が蘇州の役人だった時整備した虎丘に通じる
商店街です。
門飾獅子
門墩だったかどうかわからないが門に飾りとして置かれている獅子が4組有りました。
画像1:春申君廟 王洗馬巷16号
“戦国四公子”と言われた楚の黄歇(?~BC238年)を祀った廟
画像2:春申君廟門の獅子
画像3:敦仁里 包衛前30号門の獅子
画像4:呉天国古玩家具店の商品獅子
画像5:中国昆曲博物館 中張家巷14号の獅子(撮影:張柏樹氏)
抱鼓型
2組有りましたが、いずれも古美術商の商品でした。
画像1:古美術品商懐徳堂の商品 (撮影:張柏樹氏)
門墩なのか門飾なのか分かりません。
画像2:呉天国古玩家具店の商品 (撮影:張柏樹氏)
門の飾り用に近年商品として造られたのでしょう。
托日型
托日型門墩で鼓座が皿立て型は8組でした。 鼓座がこぶ型は26組でした。
皿立て型の代表的なのを紹介します
画像1:蘇州円通美術館 闊家頭巷6号 (撮影:張柏樹氏)
この建物は円通寺と言う寺を美術館に転用されたものです。
画像2:蘇州円通美術館の左側門墩 (撮影:張柏樹氏)
画像3:呉都会館正門 官太尉15号 (撮影:張柏樹氏)
画像4:寒山寺東門に飾りとして置かれている右側門墩 高:81CM
画像5:山塘街253号の時計屋さん攬月堂が門に飾りとして置いている門墩
鯉が龍に変身している模様“登竜門”の吉祥図が彫られています。
この門墩以外の蘇州の皿立て型鼓座の7組の門墩には全て“三匹の
獅子が繍球を玩んでいる模様”が彫られていました。
托日型門墩で鼓座がこぶ型なのは26組でした。
こぶの部分が円形なのが3組有りました。
画像1:獅子林 (撮影:張柏樹氏)
元代の至正二年(1342年)に建設された名園
画像2:獅子林の門墩 (撮影:張柏樹氏)
画像3:汀州会館 山塘街192号
画像4:汀州会館の門墩
画像5:呉都会館北門 葉家弄官太尉17-1号 (撮影:張柏樹氏)
五花弁二重花模様が彫られた門墩はこれだけでした。
こぶ型鼓座の托日型門墩23組に彫られた模様は“獅子が繍球を弄ぶ”と“蓮の花”が殆どです。
一番多い“獅子が繍球を弄ぶ”模様を彫った門墩を紹介します
画像1:寒山寺西門
画像2:寒山寺西門の門墩 高:106cm
画像3:留園正門の門墩 高:137cm
画像4:網師園正門の門墩 闊家頭巷11号 (撮影:張柏樹氏)
“三匹の獅子が繍球を弄ぶ”門墩が殆どです。
画像5:忠王府東脇門の門墩 (撮影:森田逸美さん)
“二匹の獅子が繍球を弄ぶ”門墩は二組だけありました。
こぶ型鼓座托日型門墩23組に彫られた模様は“獅子が繍球を弄ぶ”と“蓮の花”が殆どです。
“蓮の花”模様を彫った門墩を紹介します
画像1:彭定求彭后豊故居 十全路103号 (撮影:張柏樹氏)
彭定求氏は康熙十五年(1676年)に、彭后豊氏は雍正五年
(1727年)に高級官僚採用試験“科挙”を第一位で合格し、他にも一族で
も多くの“科挙”合格者を出した名家です。
画像2:彭定求彭后豊故居の門墩 (撮影:張柏樹氏)
画像3:王鏊祠正門の門墩 高:138cm 幅:24cm 長さ:84cm
明代中期に“科挙”を第三位で合格した王鏊氏を祀った祠。
画像4:報恩寺の門墩(撮影:柳井直躬氏)
蓮の花は殆ど六花弁です。
画像5:城東中心小学校 (撮影:張柏樹氏)
八花弁の蓮花が彫られた門墩が一組ありました。
こぶ型鼓座托日型門墩23組に彫られた模様は“獅子が繍球を弄ぶ”と“蓮の花”が殆どです。
獅子と蓮花以外の模様が彫られた門墩を紹介します
画像1:忠王府正門
画像2:忠王府正門の門墩 (撮影:張柏樹氏)
画像3:蘇州園林博物館の門墩
太陽を仰ぎ見る麒麟を彫った門墩は二組ありました。
画像4:澤被東南の門前の石坊楼 山塘街
画像5:澤被東南の門墩
“壽”の文字を彫った門墩が一組ありまあした。
画像6:平江路25号の民家 (撮影:張柏樹氏)
画像7:平江路25号の右側門墩 (撮影:張柏樹氏)
唐草模様が丸い部分周辺に彫られています。
画像8:呉門人家の右側門墩 潘儒巷31号 (撮影:張柏樹氏)
中華模様(連続凸凹模様)が丸い部分周辺に彫られています。
丸い部分の周辺に模様を彫った門墩はこの二組だけでした。
北京では「こうした模様は貴族でないと彫ほれない。」と聞いたのです
が………。
画像9:場所不明 (撮影:島村志げりさん)
画像10:場所不明 (撮影:島村志げりさん)
こぶ型が異なる型をした美しい門墩は二組でした。
渦巻型
4組ありました。
画像1:虎阜禅寺第二門 元代の建築
画像2:禅寺第二門の門墩 (撮影:柳井直躬氏)
高:89cm 幅:30.5cm 奥行:145cm
画像3:場所不明 (撮影:島村志げりさん)
浪が巻いている型をしています。
画像4:留蘭小宅 斎門路72号
画像5:蘇州福橲有限公司 斎門路92号
この二つは現代制作されたものと思います。
蓮花型
3組ありました。
台座の上に蓮の花が置かれている珍しい形で蘇州と上海でしか見たことはありません。
画像1:澄霊道院 周庄鎮中市街82号
蘇州の30km南東の周庄鎮に北宋1086年に建設された道教の寺院
画像2:澄霊道院の門墩
画像3:西園寺の門墩 (撮影:侯長春氏)
画像4:霊岩山寺に収蔵されている右側門墩 (撮影:柳井直躬氏)
画像5:霊岩山寺に収蔵されている左側門墩 (撮影:柳井直躬氏)
大きな門墩で、門扉を受ける部分の天空中の龍の彫刻も素晴らしいです。
以前は大変豪華な建造物に設置されていたのでしょう。
箱子型
14組ありました。
代表的のものを紹介します。
門墩として使用されているのは4組でした。
画像1:虎阜禅寺大山門
画像2:虎阜禅寺大山門の門墩
模様は彫られていません。
画像3:楓橋勝跡の門
寒山寺の対岸の広場にある建物の門です。
画像4:楓橋勝跡の門の右側門墩
正面には上を向いた鷺?が彫られ、内側には牡丹が彫られています。
近年作られた門墩の様です。
画像5:保健路15号の民家
画像6:15号の民家の門墩
大変背の低い箱型門墩
画像7:孝節対岸の民家
写真では分かりにくいですが縦板子門墩でしょう?
収蔵されたり、古美術商の商品になった箱子型:10組 石鼓型:1組 縦板子型:1組です。
それらの代表的な物を紹介します。
画像1:定慧寺の中に収蔵展示されている門墩 (撮影:張伯樹氏)
正面に鹿・内側に牡丹が彫られている。
画像2:虎阜禅寺の中の石観音殿に収蔵された門墩
模様は彫られていません。 (高:55cm 幅:17cm 奥行:81cm)
画像3:文廟の中に収蔵された門墩 (撮影:張伯樹氏)
画像4:古美術商懐徳堂の商品 (撮影:張伯樹氏)
正面に鹿が彫られています
画像5:古美術商の商品 (撮影:張伯樹氏)
正面には麒麟が、内側には壺を背負った馬が彫られています
画像6:蒋廟前12―1号の通り(東→西)
画像7:蒋廟前12―1号の門にあった門墩
(高:45cm 幅:27cm 奥行:75cm)
正面には“小川の水を飲む鹿”が彫られています。
画像8:古美術商懐徳堂の商品 (撮影:張柏樹氏)
正面には鹿?が彫られています。
画像9:蔡雲娣石彫芸術館の商品 山塘街149号
石鼓型門墩 (高:45cm 奥行:45.5cm)
画像10:拙政園内に収蔵された縦板子型門墩 (撮影:柳井直躬氏)
写真の奥の門墩
第6節 蘇州市 終
第8章 江蘇省 終