門墩は美しい模様が彫られた石彫工芸品です。
この模様は故事来歴や漢字特性“一音有多字”を生かして住人の望みや人生観倫理観を表しています。
模様を詳細に見られるよう拓本を採りました。
各地の門墩をお楽しみ下さい。
北京の門礅は門の外側に出ている主座部分の豪華な須弥座に作っています。
須弥座上の円形の特徴で分類すると以下の様に分類できます。
抱鼓型有獅子門墩
抱鼓型有獣吻頭門墩
抱鼓型上部不明門墩
抱鼓型水中蓮葉台門墩
抱鼓型瑞雲台座門墩
抱鼓特殊台座型門墩
それぞれの門墩の拓本を紹介します。
鼓胴正面には“天女散花”(花篭の花弁を撒く天女)、鼓皮面には“劉海戯金蟾”(裕福で子沢山・財源枯渇せず裕福)の吉祥図が彫られてます。
錦鋪(鼓座の下に垂れた逆三角形)の正面に仙人:鏡離権の宝扇が、内側に仙人:呂洞賓の宝剣が彫られてます。これら仙人の持物は長寿の吉祥図です。
在:西城区教育街1号
鼓皮面に木の花(何の花か不明で寓意も不明)が、錦鋪には桃(長寿)が彫られてます。鼓胴には宝相花が、錦鋪には鼓皮面と同じ花?が彫られています。
在:宣武区北大吉巷20号
門墩内側の鼓皮面には“麟吐玉書”(書籍を噴出した麒麟=学業成就:天下泰平)の吉祥図が、錦鋪には花辺紋が彫られています。
鼓胴上の親獅子が文化革命で壊されているのが残念です。
左右の門墩鼓胴に両親獅子と戯れる七匹の獅子合計九匹の獅子が彫られ“九世同居”(子孫繁栄・一族繁栄)の吉祥図でした。
在:西城区頭髪胡同1号
鼓皮面には“桐の下に霊芝を加えた鶴のつがい”(右の門墩に彫られた“桐の下に霊芝を加えた鹿のつがい”と合わせて“六合同春”=天下泰平)の吉祥図が彫られてます。
鼓胴には“宝相華”が彫られてます。
正面と側面の錦鋪には異なった草花が彫られてます。花の種類がわかりませんので寓意は不明です。
在:西城区文華胡同18号
鼓皮面には“獅子滾綉球”(避災祈福:事々如意:子嗣昌盛:好事不着断)の吉祥図が彫られ、錦鋪には牡丹(富貴栄誉の象徴)が彫られてます。
在:西城区王府倉胡同2号
鼓皮面に“如意棒に柿の実二個が翻帯で結び付け”られた吉祥模様(“事々如意”=万事思い通りに実現す)が彫られてます。
錦鋪には文人の十四宝の芭蕉の葉(心を通じ合い永遠に仲睦まじい)吉祥図が彫られてます。
“翻帯”は好事不断の吉祥図で門墩には多く彫られてます。
在:宣武区三井胡同15号
鼓皮面には四花弁花が彫られてます。何の花か不明で寓意も不明です。
錦鋪には“琴棋書画”(文人の象徴)の棋が彫られてます。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区跨車胡同11号の門墩。
鼓皮面には真上から見た六花弁の蓮花(高潔の象徴)が彫られてます。その下の鼓座は蓮の葉が彫られてます。蓮の花と葉で“並蒂同心”(夫婦恩愛)の吉祥図です。
錦鋪に花が彫られてますが何の花か不明で寓意も不明です。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元東城区后肖家胡同32号の門墩
鼓皮面には四花弁花が、鼓胴にも美しい草花が彫られてます。いずれも何の花か不明で寓意も不明です。
錦鋪(正面と側面)には長寿の象徴の桃が彫られてます。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元宣武区椿樹区四合院の門墩。
鼓皮面には松樹を看返る麒麟(長寿?)が彫られ、錦鋪には仙人“漢鐘離”の宝扇(長寿の象徴)が彫られてます。
北京の古美術品収集家:李偉氏所有の門墩。
「注」 獣吻(shouwen)は龍の子供の一つで邪気を好んで食べるので
門墩の上にその頭部が置かれているのでしょう。
正面では太鼓胴に宝相花が彫られ、錦鋪に頭髪の長い怪獣が彫られてます。
内側では鼓面に松樹を看返る麒麟(長寿?)が彫られ、錦鋪に繍球を弄ぶ獅子が彫られてます。
在:西城区新文化街135号
生まれて初めて目にした門墩です。
「見事な彫刻の丸い石。何の為に門に置かれている??」と思いました。
門墩外側の鼓皮面には六花弁の蓮を真上から見た模様が彫られ、下の鼓座は蓮の葉が彫られ、“並蒂同心”(夫婦相愛)の吉祥図です。
門墩内側の鼓皮面には岩の上に空の三日月を振返る夔牛(独脚の怪獣=寓意不明)が彫られ、鼓座の下の錦鋪には翻帯が結ばれた筆(文人の象徴?)が彫られてます。
在:東城区官書院胡同7号
鼓皮面には深山の滝壺に仙人が彫られてます。?(寓意不明)
鼓座下の錦鋪には翻帯が結ばれた犀角杯(雑宝の一)が彫られてます。
在:北京の胡同関連品収集家の収蔵
元西城区能仁胡同9号の門墩
門墩内側の鼓皮面には四花弁に花が彫られてます。何の花か不明で寓意も不明です。
鼓胴の上部に邪気を好んで食べる獣吻(龍の子)の頭が彫られ、正面には“宝相華”が彫られてます。
門墩外側の鼓皮面には六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られてます。
錦鋪(内側と正面と外側)に蓮花・宝瓶・金魚(“八宝吉祥図の一)が彫られてます。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区南楡銭胡同18号取壊し跡地の門墩。
左側門墩内側の鼓皮面には二個の桃が付いた枝を加えた蝙蝠が下の鹿と見合っている“福禄寿”の吉祥図が彫られています。鼓胴正面には美しい花が彫られてますが、何の花(萱?)か不明で寓意(母親に心配かけない?)も不明です。太鼓を支える小太鼓胴には“草龍拐子”の吉祥図が彫られています。
右側紋墩内側の鼓皮面にも二個の桃が付いた枝を加えた蝙蝠が下の鹿と見合っている“福禄寿”の吉祥図が彫られています。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区后泥窪胡同9号の門墩。
外側の鼓皮面に六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られてます。鼓胴には牡丹(富貴の象徴)が宝相華に彫られてます。
内側の鼓皮面に“獅子滾綉球”(避災祈福:事々如意:子嗣昌盛:好事不着断)の吉祥図が彫られてます。
錦鋪(外側と正面と内側)には桃(長寿の象徴)が彫られてます。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区南太常胡同13号の門墩。
鼓皮面に五匹の蝙蝠が壽を支えた“五福捧壽”(長寿)の吉祥図が彫られてます。
内側錦鋪に長寿の象徴“松壽”が、正面錦鋪に来春の象徴“梅壽”が彫られてます。
在:西城区北草廠胡同12号
鼓胴の上に邪気を好んで食べる獣吻(龍の子)の頭が彫られ、後方には“四花弁の花”が彫られてます。何の花か不明で寓意も不明です。
鼓皮面に四脚獣が彫られてます。何の獣か不明で寓意も不明です。錦鋪には繍球を弄ぶ獅子が彫られてます。
在:宣武区大保吉巷29号
鼓胴には芭蕉の宝相華が、その下の小太鼓胴に五匹の蝙蝠が壽を支えた“五福捧壽”(長寿)の吉祥図が彫られてます。下の錦鋪に五花弁の花にに向かう鳳凰が彫られています。何の花か不明で寓意も不明です。
鼓皮面に雲の中の太陽を振り仰ぐ四脚獣が彫られてます。何の獣か不明で寓意も不明です。 下の錦鋪にに来春の象徴“梅樹”が彫られてます。
在:東城区魏家胡同59号
鼓胴に邪気を好んで食べる獣吻(龍の子)の頭が彫られ、鼓皮面に六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られてます。
錦鋪(正面と内側)に“吉星錦”の吉祥図が彫られています。
在:西城区西四北七条33号
外側の鼓皮面に大変美しい花模様が彫られています。寓意は不明です。
錦鋪に“花辺紋”が彫られています。
在:西城区西新簾子胡同42号
左右の鼓胴に蓮池に一羽の鷺がいる“一路連科”(科挙の試験を順調に首席で合格)の吉祥図が彫られています。
在:西城区頭髪胡同号
鼓胴に草花が彫られています。何の花か不明で寓意も不明です。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区按院胡同30号
鼓胴上部に邪気を好んで食べる獣吻(龍の子)の頭が彫られ、正面には“宝相華”が彫られてます。
錦鋪(正面と内側)に”雷花錦”の吉祥紋が彫られてます。
在:西城区王府倉胡同29号
鼓皮面に六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が、下の錦鋪に牡丹(富貴の象徴)が彫られてます。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区南楡銭胡同13号の門墩。
鼓皮面に生きの良い白菜”発財”(財が豊かに貯まる)吉祥図が、下の錦鋪に牡丹(富貴の象徴)が彫られてます。
在:西城区西新簾胡同45号
鼓皮面に岩に座った猿が松樹に印箱を吊るす”封侯掛印”(昇進)の吉祥図が彫られてます。下の錦鋪に五花弁花が彫られてますが寓意は不明です。
在:崇文区長巷二条13号
松樹の下に四脚獣が彫られてます。寓意は不明です。
在:東城区大経廠胡同51号
門墩の下部の拓本です。
太鼓を支える小太鼓胴に瑞雲が彫られ、その下の錦鋪に草花が彫られてますが寓意は不明です。
最下段に花辺紋が彫られてます。
在:崇文区長巷二条乙5号
破損の為上部に有ったのは獅子か獣吻頭が不明な門礅が有ります。
鼓胴には何かに花が彫られてます。寓意は分りません。下の錦鋪には瑞雲が彫られてます。
鼓皮には六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られてます。下の錦鋪の花が何か不明で寓意はも不明です。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区南太常胡同の門墩
中華民国時代の北洋軍軍事将領:張宗昌(1881.2.12-1932.9.3)の故居
文化革命で門墩の表面の模様が完全に削り落とされ以前の状況が分りません。
在:西城区西四北五条7号
門墩の基座が須弥座でなく水中に生えた蓮に作られています。蓮の葉と花が一体で“並蒂同心”(夫婦恩愛)の吉祥型に成ってます。
豪華な須弥座に成る以前の古い型の門墩だと思います。
門墩の外側は何も彫られてません。鑿跡が美しい。
鼓胴上部に太鼓を吊上げる環に付けられた飾房が彫られてます。下の台座には万病に効く“霊芝”(無病息災)が彫られてます。
門墩の内側鼓皮面には六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られ、台座に水面から伸び蓮葉が彫られます。“並蒂同心”
この水面には一匹の魚が彫られ“連年余裕”(毎年裕福)の吉祥図です。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元東城区永恒胡同30号の門墩。
門墩の内側は“並蒂同心”の吉祥図。
鼓胴上部に太鼓を吊上げる環に付けられた飾房が彫られてます。
台座正面の模様は不明で、寓意も不明です。
在:宣武区粉房琉璃街31号
門墩の内側は“並蒂同心”の吉祥図。
在:崇文区長巷二条18号
鼓胴上部に太鼓を吊上げる環に付けられた飾房が彫られてます。下の台座には天空に浮いた“瑞雲”が彫られてます。
門墩の内側には“並蒂同心”
軸座の内側と後側にも“瑞雲”が彫られてます。
大変古い型の門墩でしょう。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示
元東城区北三条の門墩
鼓胴正面の花は削られ何か不明です。下の錦鋪に葡萄(豊穣の象徴)が彫られてます。
内側は豊かな水面に浮かんだ“並蒂同心”
これも古い型の門墩でしょう。
在:東城区紗路胡同11号
門墩の基座が須弥座でなく空中に浮く瑞雲に作られています。
豪華な須弥座に成る以前の古い型の門墩だと思います。
左右とも門墩の内側は瑞雲に乗せられた花が彫られてます。寓意は不明です。
左右とも台座正面に繍球が浮く空中を掛ける獣が彫られています。寓意は不明です。
在:崇文区草廠二条2号
鼓胴上部に太鼓を吊上げる環に付けられた飾房が彫られてます。下の台座には模様は彫られてません。
門墩の内側には八花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られ、瑞雲に乗せられ模様が彫られてます。
在:西城区油漆作胡同26号
瑞雲に乗せられた花が彫られてます。寓意は不明です。
在:東城区菊几胡同53号
門墩の基座が須弥座でなくあまり見かけない型に作られています。
北京以外のところの門墩だと思います。
門墩の外側は何も彫られてません。鑿跡が美しい。
鼓胴上部に太鼓を吊上げる環に付けられた飾房が彫られてます。下の台座に“菊花?”(精神高潔、意志健吾の象徴)が彫られてます。
門墩の内側鼓皮面には六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られ、台座と軸座にが彫られた模様は何か不明です。
天津市でよく見かける門墩です。天津出身者の四合院でしょう。
在:北京語言大学内「枕石園」に展示。
元西城区柳巷42号の門墩。
鼓胴上部に太鼓を吊上げる環に付けられた飾房が彫られてます。下の台座に鉢植えの花が彫られてますが、寓意は不明です。
鼓皮面に六花弁蓮花(純潔高尚の象徴)が彫られてます。台座に月を振り仰ぐ四足獣が彫らられてますが寓意は不明です。
在:西城区東中胡同4号