第2節 旧城外 (楊柳青鎮)

 旧城の15Km西に天津名物の泥人形と年画(春節で使う版画)の産地で有名な楊柳青鎮があります。 

 南側の青い部分は北京~杭州を結ぶ大運河です。
 ここ楊柳青鎮は大運河沿いで運輸業等で栄え、清朝末期の天津八大家の一つ、“石家大院”(黄線で囲んだ部分)があります。“石家大院”の西北周辺に古い住宅街があります。

 “石家大院”と住宅街(赤線で囲んだ部分)の門墩状況を報告します。

 

石家大院

  “石家大院”は光緒初年(1875年)に建て始め、総面積1万㎡、部屋数200間余の豪邸です。

  ここに13組の門墩(獅子型3:抱鼓型9:箱子型1)があります。

   画像1:建物配置図                  (画像をクリックして 大きくなりますヨ)

        敷地の南西に広い池をもった豪邸です。

 

 屋敷の四つの門には抱鼓型門墩が設置されています。

   画像2:石家大院”の正門
        左側の入場券売口は近年設けられ、本来は同じ灰色の煉瓦壁でした。     
   画像3:正門の門墩
        太鼓の上に龍の子で邪気を好んで食べる“獣吻”の頭が彫出されてい

       ます。
        太鼓中央に繍玉を巡って遊ぶ三匹の獅子が浅彫りされています。
        基座には岩場に犬?に似た獣が浅く平彫りされています。
        高さ約80cm(側に建つ男性から推測)
        院内の門墩の豪華さに比べて彫りも浅くやや質素なのは、通行人に見ら

             れるので世間に遠慮した??

   画像4:石家大院”の南東門

   画像5:南東門の門墩

        太鼓の上に“獣吻”の頭が彫り出されています。

        太鼓中央に松樹の下に振返る麒麟が彫られています。

   画像6:石家大院”の甬道裏門

   画像7:甬道裏門の門墩

        太鼓の上と基座の正面に避邪の獅子が彫られています。

        門墩の側面にも吉祥模様が彫られていますが写真ではわかりません。

   画像8:石家大院”の西裏門
   画像9:西裏門の門墩

        太鼓の上に避邪の獅子が彫られています。頭部は破壊されています。

        太鼓中央に松樹の下に振返る麒麟が、基座の正面に“麒麟送子”

       が、基座の側面に瑞雲を吐く龍馬が彫られています。

 

 邸宅の中に獅子型門墩が3組あります。

   画像1:西長廊南門

   画像2:西長廊南門の門墩

       元来ここには門墩は設置されていなかったと思います。 近年観光用に

        新設されたのでしょう。

   画像3:甬道第一門

        邸宅の中央を南北に通る“甬道”の南端の門

                 (注)“甬道”は建物配置図参照

   画像4:甬道第一門の獅子型

        上顎部分が壊されています。 

        獅子を乗せた基座が箱型で須弥座以前の古い門墩です。

        基座の内側には水上を駆ける龍馬が彫られています。

        正面と軸座の模様は写真では分かりません。 

   画像5:獅子型門墩

        これは他の場所から保存の為に収蔵されたのでしょう。

 

 屋敷内に豪華な抱鼓型門墩が5組有ります。        

   画像1:甬道第二門南側

   画像2:第二門南側の門墩

        太鼓の上の獅子が壊されています。

        錦鋪に彫られた水中の怪獣が吐き出した亭が太鼓の部分に彫られて

      いる珍しい模様です。何か伝説による吉祥図でしょう。

       軸受台には二匹の獅子が繍球を玩ぶ吉祥図が彫られています。

   画像3:甬道第二門北側

        一般的には門庁には門扉は片方だけに有るのですが、この門庁には

      反対側にも門扉が設置される珍しい構造です。

   画像4:第二門北側の門墩

        親子九匹の獅子が彫られ“九世同居=子孫繁栄”の豪華な門墩です。

        太鼓には梅樹に鶯が彫られています。

   画像5:甬道第三門

   画像6:第三門の門墩
        全面に模様が深く精緻に彫られ、華やかな門墩です。

               太鼓には二匹の獅子が繍球を玩ぶ吉祥図が彫られています。

        基座の正面には避邪の獅子、側面には松樹と鶴と鹿の天下泰平の

      吉祥図が、軸受台にも獅子が彫られています。

   画像7:垂花門

   画像8:垂花門の北京式抱鼓型
        太鼓の胴回りには親子の“九世同居”の吉祥図が、太鼓の外側には

       天下泰平の象徴の象が彫られています。
        彫が深く精緻で一段と豪華です。

   画像9:東院第二門

     画像10:第二門の門墩 

                太鼓には二匹の獅子が繍球を玩ぶ吉祥図が彫られています。

        石が砂岩なのか磨耗して基座の部分の模様は分かりません。

 

 屋敷周囲の四っ門の門墩に比べ、屋敷内の門墩は大変豪華です。

 

 

 

 

 東院の隅に箱子型門墩が一組置かれていました。

 近年どこかから保存の為に収蔵されたのでしょう。

 

 

   

 

 

石家大院 終

 

楊柳青鎮の住宅街

 2009年7月28日~8月2日に門墩の調査をしました。この地域は都市開発地に指定されていました。

 調査した所は赤線の中(東西約550m×南北約150m)の部分です。
 黄色い部分が“石家大院です。
  抱鼓型:27組 箱子型:57組 門枕石:14組=合計98組を確認しました。

 

 抱鼓型門墩

 楊柳青村の抱鼓型:27組を以下の5種類に分類できます。
   ①模様が浅い平彫りの門墩 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3組
   ②太鼓を乗せた台座が錦鋪を掛けた須弥座の門墩 ‥‥‥‥‥‥‥ 3組
   ③太鼓を乗せた台座が須弥座の門墩 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1組
   ④太鼓を乗せた台座が水中蓮葉型の門墩 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3組
   ⑤太鼓を乗せた台座が箱型の門墩 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥17組
 これらを順次紹介します。
 

 ①模様が浅い平彫りの門墩

   画像1:門?を備えた曹家胡同4号
   画像2:曹家胡同4号の門墩
        丸い部分には“梅樹に鶯が止まった”吉祥図が、台座には“牡丹”が

             彫られています。
   画像3:肖家胡同7号の抱鼓型門墩
        丸い部分に“太陽と瑞雲の空の下、岩の上に羽を広げて立つ鳳凰”が、

      台座正面に“草花”が、台座側面に“鹿”が彫られています。 

   画像4:猪市大街の南側胡同に捨てられていた門墩

   画像5:捨てられていた門墩の拓本
        画像4の門?には模様はないように見えたが、手で撫でて見ると何か

       彫られているようなので拓本を採りました。
        丸い部分に“雲の漂う空の下に羽を広げた岩に立った鳳凰”模様が

       彫られており、台座には模様は彫られていないことが判りました。

 

 ②太鼓を乗せた台座が錦鋪を掛けた須弥座の門墩

   画像1:薬王廟東大街4号
       “平津戦役(1948年11月~49年1月の国共戦役)天津前線指揮部遺

      跡”として市の保存建築に指定されています。
   画像2:薬王廟東大街4号の門墩
        太鼓の胴に“宝相華模様”が、丸い部分には“牡丹と鳳凰”が、錦鋪に

      は“碁盤”と “筆”が彫られています。
        上部の獅子が無傷!ここ楊柳青鎮では大変珍しいのです。
        調査地域にあった抱鼓型門墩27組のなかで太鼓の上の獅子が無傷

       なのはこの門墩1組だけでした。

   画像3:猪市大街の邸宅
        市の文物保存大院に指定され、修復工事中でした。
   画像4:猪市大街の邸宅の門墩
        太鼓の胴に“宝相華模様”と“獣吻頭”が彫られていますが。獣吻頭は

      破壊されて “獣吻が銜えていた環”しか残っていません。

   画像5:估衣街の路上に放置された門墩 

               (高:74cm 幅:22cm 全長:68cm)
        上部の親獅子が完全に破壊されています。親獅子の前に子獅子が

      彫られ左右両方の獅子合計で九匹の獅子を彫った“九世同居”の吉祥

      彫刻だったのです。
        太鼓の丸い部分には“松に鹿(長寿)”の吉祥図が彫られています。
        錦鋪には“月を振り仰ぐ牛”が彫られています。
        彫技の素晴らしい門墩です。

 

 ③太鼓を乗せた台座が錦鋪の無い須弥座の門墩は次の1組だけです。

   画像1:楊柳青年画館

        楊柳青年画館として公開されていますが、以前は安氏の祖先を祀った

      祠堂です。

   画像2:楊柳青年画館の門墩(右側)
        太鼓の上の獅子は頭部が壊されています。 

        太鼓には“大きな花を咲かせた水草と草”がが彫られています。

   画像5:楊柳青年画館の門墩(左側)

               こちらの獅子も頭部が壊されています。

        太鼓には“大きな花を咲かせた水草の下に水鳥がいる池”が彫られてい

       ます。

 

④太鼓を乗せた台座が水中蓮葉型の門墩は次の3組です。

   画像1:喬家疙瘩一条6号
   画像2:喬家疙瘩一条6号の門墩
        太鼓の丸い部分には“梅樹に鶯”が、台座の正面には“桃”(長寿)の

      吉祥図が彫られています。
        台座の側面に“牡丹密集”の模様が彫られています。
              
   画像3:河沿大街九街東端  
   画像4:河沿大街九街東端の門墩
        太鼓の丸い部分に“二匹の獅子と?球”が、台座の正面に“池に生えた

      蓮花”が彫られています。
        台座の側面には模様は彫られていません。
 
   画像5:姜店胡同の屋敷の門墩
        太鼓の胴には“宝相華”が、太鼓の丸い部分に“八枚花弁の蓮花”が、

       台座の正面に“池に生えた花”が彫られています。
        台座の側面には“荒野を快走する馬”が彫られています。

 

 ⑤太鼓を乗せた台座が箱型の門墩は17組あります。
  17組の抱鼓型門墩は彫られた模様と大きさの違いを除いて型は同じです。
  以下模様を中心に幾つか紹介します。

   画像1:安家大院(估衣大街)の表門
   画像2:安家大院の抱鼓型門墩 (高:86cm 全長:81cm)
        太鼓の上の獅子は破損され、名残りを留めているだけです。
   画像3:安家大院の抱鼓型門?の拓本
        丸い太鼓の周囲には唐草模様が彫られています。
        丸い太鼓の部分には“梅樹に鶯”の吉祥模様が彫られています。
        太鼓下の台座には“松樹に鹿(長寿)”の吉祥模様が彫られています。
        台座の左側は門扉軸受台です。ここには“蘭”が彫られています。
        右の四角は台座の正面です。ここに“獅子(避邪)”が彫られています。
        “梅樹に鶯”・“松樹に鹿”・“獅子”は他の多くの門?にもよく彫られて

       いる模様です。
        “梅樹に鶯”の他にも“松樹に鶴”など“樹木に鳥”の模様は何種類か

       彫られています。

   画像4:喬家疙瘩胡同の抱鼓型門墩
        太鼓の上の獅子は破損され、臀部を留めているだけです。
        都市開発予定地ですでに住人は居ない空き家になっていました。
   画像5:喬家疙瘩胡同の抱鼓型門墩の拓本
        太鼓の丸い部分には“猿が松の枝に印を掛けている(封侯掛印)”=

       “一国の領王に認定される”吉祥図が彫られています。この吉祥模様を

       彫った門墩は幾つかあります。 
        太鼓の下の台座には“水上を快走する龍馬(龍馬負図)”=“生活が

       豊かに良い世間に成る”吉祥模様が彫られています。
        台座の右側は門扉回転軸受けです。ここに“瑞雲”が彫られています。
        左の四角は台座の正面です。ここに“獅子(避邪)”が彫られています。
        台座の周囲に連続模様が彫られ、下は須弥座になっており、この門墩

       は大変立派です。身分の高い人の邸宅だったのでしょう
        “猿が松の枝に印を掛けている(封侯掛印)”・“水上を快走する龍馬

      (龍馬負図)”は他の多くの門?にもよく彫られている模様です。
        他の地方では門扉軸受台にはほとんど模様を彫りません。しかし、

       この楊柳青鎮では門扉軸受台に“瑞雲”が多くの門?に彫られています。

       楊柳青鎮の特徴の一つです。

   画像6:喬家??四条15号の門墩
        太鼓の皮の部分に“岩から垂れた瓢箪(福禄・子沢山・夫婦円満)”

            の吉祥図が、台座の正面には“獅子”が、側面には“波の上を快走する

            龍馬(龍馬負図)”が彫られています。
        “岩から垂れた瓢箪”はここ楊柳青鎮の門?にはよく彫られている模様

      です。しかし他の地方では見かけたことがありません。近くの北京でも

      見たことがありません。楊柳青鎮の門?の特徴の一つです。

   画像7:薬王廟東大街8号の門墩
        太鼓の皮の部分に“何か菜っ葉のような草”(どんな意味があるのか知

       りません。)が、台座の正面には“遠方に山が見える木下に四足の獣”が

       彫られているようです。
        側面には“波の上を快走する龍馬(龍馬負図)”が、門扉の軸受け台

             には“瑞雲”が彫られています
        “何か菜っ葉のような草”も他の地方では見かけたことがありません。

   画像8:施医局6号前の門墩の内側
        太鼓の皮部分に“岩陰の竹林”が、台座の側面には“岩に登る山羊?”

       が、門扉の軸受け台には“瑞雲”が彫られています。
        “岩陰の竹林” “岩に登る山羊?”がどんな意味があるのか知りません。
   画像9:施医局6号前の門墩正面
        台座の正面には“高い塔の見える処で、大きな袋を背負って牛に男が

             話している”様子が彫られています。
        “岩陰の竹林” “岩に登る山羊?” “牛に男が話している” のがどん

             な意味があるのか知りません。
         (この門?はどこかの門に有った物がはずされ、ここ施医局6号前に

               置かれたのでしょう。2005年には有りましたが、09年には無くなってい

               ました。)

   画像10:喬家??一条3号の門墩
        太鼓の皮の部分に“劉海戯金蟾(裕福で子沢山)”の吉祥図が、門扉

             軸受台には“瑞雲”が彫られています
        台座の正面“獅子?”側面“牛?” 破損がひどくて、良く解りません。

 

 紹介した6組の門墩の太鼓の上には獅子か獣吻頭が有ったのですが、全て破壊されています。

 

箱子型門墩

 楊柳鎮の箱子型門墩は全て台座を持たない柱状です。
これを分類すると次の4種類です。
   ①模様が浅い平彫りの門墩‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4組
   ②柱の上面が斜めの門墩(参照:次頁写真)‥‥‥‥4組
   ③柱に模様が浮彫りされている門墩‥‥‥‥‥‥‥37組 
   ④模様が彫られていない門墩‥‥‥‥ ‥‥‥‥‥12組
これらを逐次紹介します。

 

①模様が浅い平彫りの門墩

   画像1:利民胡同2号
   画像2:利民胡同2号の門墩
        正面に斜めの線=“吉星錦”が見えます。
        内側にも同じ大きさの菱形が沢山線彫り=“吉星錦”があります。写真

       では見えにくいです。
        “吉星錦”は吉慶が続く事を象徴する吉祥図です。

   画像3:曹家胡同8号

   画像4:曹家胡同8号の門墩
        利民胡同の門墩の逆で内側に斜めの線・正面に菱形が線彫りされて

        います。

   画像5:曹家胡同12号

        取壊し予定なので住人は既に住んでいません。

        門は壊され、門墩が入口に積まれています。

        画像3と同じ模様が彫られています。

             (高:43.5cm 幅:22cm 全長:51cm) 

   画像6:曹家胡同6号

   画像7:曹家胡同6号の門墩 
        全体に模様が彫られていますが、彫が浅くてどんな模様か良く判りません。
        拓本に採らせてもらいました。
         
   画像8:曹家胡同6号の門墩の拓本
        正面に“飾房が下がった環を銜えた獣吻の顔と下から獣吻を見上げて

       いる獅子?” が彫られ、側面には“崖の途中に生えた松樹を見上げる

       馬?”が彫られ、門扉軸受台には“低い樹木の下を歩む子馬?”が彫ら

       れています。(絵の寓意は知りません。)

 

②柱の上面が斜めの門墩
 門墩の背が低く上が内側に斜めになっている門墩が4組ありました。
 彫られた模様は4組とも大変良く似た模様です。         

   画像1:猪市大街32号の門

   画像2:猪市大街32号の門墩
   画像3:猪市大街32号の門墩の拓本
        全体の模様を知りたくて拓本に採らしてもらいました。 
        正面に“鉢に植えられた花”が、内側に“大きな草を銜え鹿?”が頂上

       の斜面に“八花弁の花?”が、門扉軸受け台には“瑞雲”が彫られてい

       ます。                
   画像4:門墩を備えた喬家疙瘩胡同の邸宅
   画像5:喬家疙瘩胡同の門墩
        正面に“鉢に植えられた花”が、内側に“大きな草を銜え鹿?”が彫ら

       れています。
   画像6:人平頭胡同7号の門墩
        正面に“鉢に植えられた花”が、内側に“大きな瑞雲の下に大きな草

            を銜えた鹿?” が彫られています。                 
   画像7:路上に放置された門墩の柱部分
        正面には“鉢に植えられた花”が、内側には“大きな草を銜えた鹿?”

      が頂上の斜面は“八花弁の花?”が彫られています。

 

③柱に模様が浮彫りされている門墩が37組あります。
 模様を中心に幾つか紹介します。

  人物が彫られているのが10組ありました。

    彫られた模様には“麒麟送子”“扼虎救父”が多いですが“連生子”や“婦人?”の図も1組づつありました。 

   画像1:大寺胡湖20号
        取壊し予定地域のため住人は既に引越し、無人の邸宅です。
   画像2:大寺胡湖20号の門墩
        正面に“麒麟に男の子が乗っている(麒麟送子)”=“立派な男が生まれ

             てくる”吉祥図が、内側には“岩から垂れた瓢箪(福禄・子沢山・夫婦円

             満)”の吉祥図が、門扉軸受台には“瑞雲”が彫られています。

        “麒麟送子”の吉祥図を彫った門墩は他に3組もありました。 

   画像3:青政路の邸宅

   画像4:青政路邸宅の門墩

        正面に左手で頭上の物を支え、炎?を持った左腕を高く上げた人物が

      彫られています。寓意は分かりません。

   画像5:利民胡同9号

   画像6:利民胡同9号の門墩

        正面に婦人?が彫られています。

   画像7:磨盤胡同(南→北)

   画像8:磨盤胡同の門墩

        “連生貴子”(良い男の子が生まれる)の吉祥模様が彫られています。

   画像9:吉祥胡同3号の門墩
        右側の門墩の正面に“虎を高々と差し上げた武人(扼虎救父)”=

            “襲って来た虎を殺して父を救った親孝行”の模様が彫られていす。
        左側の門墩には“剣を腰に下げた武人”が彫られています。寓意は

             知りません。

 

避邪の動物(獅子・獣吻)を彫ったのが4組ありました。

   画像1:施医局3号

   画像2:施医局3号の門墩

        正面に蹲踞した獅子が、側面に龍馬が彫られています。

   画像3:人平頭胡同2号

   画像4:人平頭胡同2号の門墩

        正面に蹲踞した獅子が、側面に龍馬が彫られています。

 

   画像5:和平頭胡同6号

   画像6:和平頭胡同6号の門墩

        “飾房の付いた環を銜えた獣吻の顔”が彫られています。

   画像7:門墩の拓本
        正面に“飾房の付いた環を銜えた獣吻の顔”が、側面には“岩から垂れ

       た瓢箪”が、門扉軸受け台には“瑞雲”が彫られています。

   画像8:西渡口5号の門墩

 

   【獣吻とは】
   “獣吻”とは龍の子供の一つで中国特有の空想の怪獣です。
   “獣吻”は好んで陰邪を食べますので抱鼓型門墩の上にその頭部が彫られて

   いるのです。
   “龍の子供”で日本で見るのは好んで重いものを背負う“贔屓”(石碑を背負っ

    ている亀に見える)や好んで鳴くので鐘の釣手になっている“徒労”(二匹の

    小さい龍に見える)等です。

 

 植物に動物を添えた吉祥図を彫った門墩が17組あしました。 

   画像1:菜市大街10号

   画像2:菜市大街10号の門墩

        正面に“松樹与鹿”が、内側に“水上を快走する龍馬(龍馬負図)”

      =“生活が豊かに良い世間に成る”吉祥模様が彫られています。
        この“松樹に鹿”の長寿の吉祥図を彫った門墩は5組ありました。

   画像3:菜市大街3号

   画像4:菜市大街3号の門墩

        正面に“梅樹与鶯”が、内側に“龍馬負図”が、門扉軸受台には

       “瑞雲”が彫られています。
        “樹木に鳥”の彫られた門墩は8組ありました。
        “梅樹与鶯”以外の模様は樹木や鳥の種類が判らず寓意の分から

        ないのが殆どでした。 

   画像5:曹家胡同9号

   画像6:曹家胡同9号の門墩

        正面に“猿が松の枝に印を吊るしている(封侯掛印)”=“一国の領主

       に承認される”吉祥図が彫られています。      

       箱子型門墩で最も美しい門墩だと思います。
   画像7:猪市胡同の邸宅の門墩
        正面の樹木に何が彫られているか分かりませんが、側面の“龍馬負図”
       や上に掛けられた“錦鋪”の彫刻は見事です。

        ここで最も美しい門墩だと思います。
        数日後無くなっていました。誰かが持って行ったようです。 

      画像8:勝利胡同1号     
   画像9:勝利胡同1号の門墩
        正面に“蓮の花の側に鳥”が、内側に“岩から垂れた瓢箪”の吉祥図が

             彫られています。
        鳥が鷺でしたら“一路連科(科挙試験を最終試験まで順調に合格す

             る)”吉祥図です。

 

 文字を彫られた門墩が2組ありました。       

   画像1:継和胡同3号対面
        “○○?”“○○?”文字は私には読めませんでした。
   画像2:磨盤胡同北端

        “如意”“吉祥”が彫られていました。

 

 

 模様が彫られていない門墩が9組ありました。
 模様が彫られていない門墩は北京にもありますが、他の地方ではほとんど見た事がありません。無価値と思われ壊されたり、保存の対象にされていないのでしょう。
 北京では“模様が彫られていない門墩を備えた邸宅”は“模様が彫られた門墩を備えた邸宅”より位が低いのですがここ楊柳青鎮でもそうなのかどうか判かりません。      

   画像1:菜市大街の邸宅
   画像2:菜市大街の模様の彫られていない門墩    
   画像3:門墩を備えた曹家胡同1号の邸宅        
   画像4:門墩を備えた青政路の邸宅        
   画像5:門墩を備えた喬家疙瘩一条3号門

 

 門枕は14組ありました。 
 そのうち2組は正面に模様が、1組は文字が彫られています。他の11組は無彫飾です。   

   画像1:猪市大街7号の邸宅
   画像2:猪市大街7号の門枕 (高:26cm 幅:18cm 長:21cm)
        正面に“梅樹に鶯”の吉祥模様が彫られています。     
   画像3:安家大院東裏門の門枕 (高:25cm 幅:27.5cm)
        正面に獅子が見事に浮き彫りされています。残念ながら前脚と後脚が

      壊れています。
        天津旧城内にはこれに似た獅子の浮彫りの門枕が沢山ありました。      
   画像4:盤香四条胡同
        左右とも正面に“福”の文字が彫られています。
   画像5:杜家頭胡同2号
        無彫飾の門枕を備えた家の門です。

 

 楊柳青鎮でも運河の南部で1970年代に建てられた民家の地域では、古い村とは門墩事情が異なっていました。
 南園里一条と隣の南園路の2本の通りを調べました
 獅子型:2組 抱鼓型:1組 箱子型:1組 門枕:1組ありました。

   画像1:1970年代に建設された南園里一条。(北から南)
        左のテーブルは中国特有の屋台朝食風景。     
   画像2:獅子型門墩を備えた門       
   画像3:抱鼓型有獅子門墩を備えた門
   画像4:箱子型門墩
        正面には“梅樹に鶯”の下に“福”の字が、上には“花”が彫られています。      
   画像5:門枕の正面に“福”の字が彫られています。

 

 

――――【 楊柳青鎮の門墩について気付いた事項 】――――

 

1 全般的な事項
  ◎人物を彫った門墩が多い。
  ◎“岩から垂れた瓢箪”模様は当地でしか見ない珍しい模様。
  ◎模様の浅い平彫りの物がある。
  ◎門墩の門扉軸受台に“瑞雲”が彫られている。

 

2 獅子型
  ◎見当たらない。

 

3 抱鼓型
  ◎天津式抱鼓が多い天津旧城に近いのに天津式抱鼓が無い。
   (天津式の特徴:錦鋪が太鼓と鼓座の間にある)
  ◎北京式抱鼓が少ない。

 

4 箱子型
  ◎台座を持たない石柱型のみ。
  ◎“錦鋪”が石柱の上部に掛けてある。
  ◎石柱上部が斜めの物がある。
   (楊柳青鎮でしか見ないので楊柳青式と命名します。)

 

第2節 旧城外 終